おこめ券とハンバーグ



俺が遠江静海と出会ったのは、大道芸の腹話術をしていた時、数少ない観客の中の一人だった。
身銭がない俺は、飽きられると各地へ渡り、腹話術で食いつないでいた。
そして、大道芸を終え、どうやって夜露をしのごうか、考えあぐねていたところに彼女が話しかけてきた。
「面白かったです。腹話術。どうやって、物語を考えたんですか?」
「・・・いや、ただ、俺の旅の途中の自問自答を見せてるだけさ。俺はねぐらを探さなきゃならないんだから、もう、帰った。帰った」
「お宿、ないんですか?」
「ああ・・・。もう、いいだろ」
「あの・・・。家に来ませんか?」
「え!?いいのか?」
「おこめ券とハンバーグもつけちゃいます。そのくらい、楽しかったです。腹話術」
「あ、ありがとう・・・。」
というわけで、静海の後をついていき、俺は静海の家に招待された。
静海が母親に何かを頼んでいる。よく聞き取れない。
待ちぼうけを食らわされていると、静海がぱたぱたと戻ってきた。
「大丈夫。おこめ券もハンバーグもお家もあるからね。名前はどうしよっか・・・?」
「え!?・・・な、名前?」
「ま、ありきたりだけどミケでいいっか。よろしくね、ミケ」
「え!?・・・え!?・・・ミケ!?」
「かわいい~~~♪・・・もふもふ♪」



・・・



「・・・このまま、ネコになってもいいかな・・・おこめ券付きだもんな・・・」





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