企業統計とサービス供給能力の構造分析

1. 企業数の減少と純減率モデル

企業数の推移:

2014年から2016年の企業数の変化:

→ 企業数は「毎年約3.2%減っている」構造とみなせる。

2. 開業率5%を仮定すると、企業数の純減3.2%を説明するために必要な実質廃業率は約8.2%となる。

前提:

開業数:

年平均純減:11.5万者とすると、廃業数は「開業数+純減数」とみなせる:

→ 日本の実質廃業率は、白書で扱われる英国の廃業率10%とほぼ同水準とみなせる。

3. 純減3.2%と1年生存率・長期生存率

純減率3.2%が将来も一定で続くと仮定した単純指数減少モデルでは、残存率は毎年0.968倍となる

この残存率を用いたX年後の残存率推計:

→ 年間3.2%減というペースは、長期的には「ほぼ全滅」に近づく指数減少である。

4. 1990年→2016年の企業数減少との比較

企業数:

比率:

モデル(年間3.2%減)で36年後を計算:

→ 実際の減少はモデルより緩いが、それでも企業数は約250万者規模で減少しており、絶対数としては深刻な減少である。

5. 売上高と物価から見た「サービス供給能力」

名目売上高(全産業):

消費者物価指数(CPI):

2024年度売上高を1990年物価ベースに換算:

→ 1990年:1428兆円、2024年(実質):約1398兆円 総売上高(実質ベース)はほぼ横ばい~微減。

6. 1事業者あたり売上高の増加=負荷の増大

1事業者あたり売上高:

→ 1事業者あたり売上高は約1.6倍に増加している。

これは「効率化」とも言えるが、裏返せば:

→ 「効率化」の実態は、最終サービス供給者への負荷増大・余裕消失であり、構造的な危険性を孕んでいる。

売上高はサービス供給量そのものではない。企業規模、製造業・卸売業・金融等の産業構成、外部委託、価格構造などにも左右されるため、1事業者あたり売上高の増加を、そのまま1事業者あたりサービス量の増加とは解釈できない。

しかし、企業数の減少と実質売上規模の維持が同時に起きていることは、供給主体の集約・大型化が進んだことを示す一つの指標になる。

7. 1就業者での比較

1就業者あたり売上高:

2024年の実質売上高を就業者数で単純に割ると、就業者1人あたり約2060万円の売上規模になる。

これは個人の「稼ぎ」や給与ではなく、企業活動全体が1人の就業者を通じて生み出している売上規模である。

平均給与478万円なら、

478/2060=23.2%

給与総額と売上高の単純比較では約23%

企業数:600万→359万

就業者:6240万→6781万

1企業あたり就業者

1990年:6240/600=10.4人

2024年:6781/359=18.9人

つまり単純平均では、1企業あたりの就業者数が約10人→約19人です。

これは「企業の集約・大型化」という方向を示しています。

ここは「雇用の統合が進んだ」という表現でかなり分かりやすいと思います。

→ つまり1就業者当たりでは大体一人2千万円稼ぐことがノルマになっていてこれは1990年とあまり変わらず。

→ ということは1事業者当たりの雇用数が増加したということで雇用の統合が進んだということ。

→ 一人2千万円が売上のノルマとすれば当然給与はそれ以下になり2024年度の平均給与は478万円。

→ したがって売上の約24%が就業者の給与に充てられているという計算。

8. 結論:日本経済は「企業数を減らしながら、残った供給者により多くを担わせる」構造になっている

1990年から2016年にかけて企業数は約600万者から359万者へ減少した。 一方、2024年の実質売上高は1990年と比較してほぼ横ばいである。

その結果、単純計算では1企業あたりの実質売上規模は約1.6倍となり、 1企業あたりの平均就業者数も約10人から約19人へ増加している。

これは単純な「企業数減少」ではなく、 供給主体の集約・大型化として見ることができる。

この集約が生産性向上によって十分に吸収できている間は問題にならない。 しかし、労働力不足、後継者不足、価格転嫁困難、規制対応コスト、 維持費上昇などによって限界を超えると、 企業の退出が単なる新陳代謝ではなく、 サービス供給能力そのものの低下につながる可能性がある。

したがって重要なのは「企業数が減ったこと」そのものではない。

減少した供給者が担っていたサービスを、 残存企業が持続的に代替できるのか。

また、雇用や供給機能の集約が進み、 供給主体の多様性が失われることは、 突発的な事故・災害・倒産・人手不足などに対する 社会全体の耐性を低下させる可能性がある。

さらに企業活動の実態を見ると、 大企業・中堅企業が直接すべての実務を担うのではなく、 下請け・孫請け・個人事業者などの小規模な供給者に 実務の一部を依存して成立しているケースも多い。

そのため、上位企業の財務状態だけを見て 「供給能力は十分に維持されている」と判断することはできない。 最終的に現場で作業を行う零細事業者や個人事業者が、 人件費・材料費・設備費・税・社会保険・規制対応費などを負担しながら 再生産可能な利益を確保できているかを見る必要がある。

上流の企業が利益を確保していても、 最下流の供給者が採算割れによって退出すれば、 最終的にはサービスそのものが供給できなくなる。

これは企業数の減少を単なる「効率化」や「新陳代謝」として 捉えるだけでは見えてこない問題である。

日本経済の問題は、企業数そのものの減少ではない。 問題は、供給網の末端でサービスを実際に提供する事業者・技能者が減少し、残存する供給者に過剰な負担を集中させることで、サービス供給網そのものの再生産能力が低下することである。

一人親方・零細事業者の減少は、それだけではサービス供給能力の低下を意味しない。廃業者の技能・労働力が企業雇用へ移転され、同等以上のサービス供給能力が維持されている可能性があるためである。 問題は、退出した供給者の人的・技能的・設備的資源が、どの程度別の供給主体によって代替・再生産されているかである。

企業統計からサービス供給能力を考える際の核心は、 「企業が何社存在するか」だけではなく、 「誰が実際にサービスを供給しており、 その供給者が将来も再生産可能な状態にあるか」 を確認することである。